中学時代、私のクラスに「プリンセス」と呼ぶにふさわしい女の子がいた。名前をY子といい、とにかく性格が明るく素直、花のように可憐で、男子生徒はもちろん女子生徒からも好かれるような少女だったのである。
そのY子が一途に想い続けるクラスメイトがG郎であった。G郎は確かに運動神経は割りと良く、性格も明るめではあったのだが、Y子が人目もはばからず片想いを公言するほどの良い部分は見当たらず、当時、不思議に思っていたものである。
しかし、よくよく考えてみると彼には、とても分かりやすい特徴があったのだ。それはズバリ、体臭。
彼が半径5メートル以内に入ってきたらそちらをみずともG郎が来たことが分かるほど強いニオイを放っていたのである。私はG郎とは仲良しだったが、体臭だけはいつまでも慣れることができなかったほどなのだ。
で、その体臭が、脇からのニオイなのか、他の場所からのニオイなのか。それはいま思い返してもよく分からない。しかし、口臭、あるいは足の裏のニオイとは異なっていたし、それ以外のカラダの部位で、そこまで強い体臭を発する秘部があるという話は聞いたことがないので、脇からのニオイと考えてたぶん間違いないのだろう。つまり、G郎はワキガであったのだ。
ヨーロッパでは脇のニオイがキツければキツイほど、異性を惹きつけるという話を聞いたことがあるが、Y子がG郎に恋い焦がれた理由も、G郎がワキガであったからではないかと、そんなふうに思えてくるのである。
脇のニオイでプリンセスを惹きつけたG郎。私は彼のことをこう呼びたい。いや、呼ばざるをえない。
ワキガ王子、と。
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